2026/08/27ガバナンス
クラウドサービスやSaaSの普及により、企業が利用するシステムやサービスは大きく広がりました。業務の利便性が高まる一方で、IDやアクセス権限の管理は複雑さを増しています。
「誰が、どのシステムに、どの権限を持っているのか」
「その権限は、なぜ付与されたのか」
「現在も、その権限は必要なのか」
こうした問いに、すぐに答えられるでしょうか。
IDの発行や認証、アクセス制御が適切に行われていたとしても、組織や利用サービスが増えるにつれて、個々の権限の状況や妥当性を継続的に把握することは難しくなります。
そこで注目されているのが、IGA(Identity Governance and Administration)です。
本記事では、IGAとは何か、そしてなぜ今、企業のID・権限管理にIGAの考え方が求められているのかを解説します。
企業では、クラウドサービスやSaaSの活用が進み、従業員一人が複数のシステムやサービスを利用することが一般的になっています。
さらに、入社・退職だけでなく、異動や兼務、プロジェクトへの参画・離任などに伴って、必要なアクセス権限も日々変化します。
その結果、例えば次のような状況が起こりやすくなります。
こうした問題は、個々の運用ミスだけが原因とは限りません。
「誰に、どの権限を、どのような理由で付与し、いつ見直すのか」を組織として管理・説明する仕組みが十分に整備されていないことが、根本的な課題の一つです。
IGA(Identity Governance and Administration)とは、IDおよびアクセス権限を「統制・可視化・証明」するための仕組みです。
IGAでは、単にユーザーのIDを管理するだけではなく、例えば次のような観点から権限を管理します。
ID管理の領域では、「IAM(Identity and Access Management)」という言葉も広く使われています。
IAMは、ユーザーを正しく認証し、適切なシステムやサービスへのアクセスを制御することを主な目的としています。
一方、IGAでは、付与されている権限そのものに着目し、「その権限が現在も適切なのか」を組織として継続的に確認・統制することを重視します。
| 観点 | IAM | IGA |
|---|---|---|
| 主な目的 | 認証・アクセス制御 | 権限の妥当性・統制 |
| 重視する点 | 利便性とセキュリティ | ガバナンスと説明責任 |
| 主な関係者 | 利用者・IT部門 | IT部門・業務部門・監査部門 |
IAMとIGAは、どちらか一方を選ぶものではなく、互いに補完する関係にあります。
IAMなどの仕組みによって、IDの発行や認証、アクセス制御の自動化が進んでも、「付与されている権限が現在も適切なのか」を継続的に確認する仕組みは別途必要です。
特に問題となるのが、業務上不要になった権限が残り続けるケースです。
例えば、部署異動によって担当業務が変わったにもかかわらず、以前の部署で使用していたシステムへのアクセス権限が残っていれば、本来必要のない情報へアクセスできる状態が続くことになります。
こうした過剰な権限や、利用されなくなった権限が蓄積すると、内部不正や情報漏洩などが発生した際のリスクを高める要因にもなります。
また、監査やインシデント対応の場面では、次の問いに対して組織として説明できることも重要です。
権限の妥当性を判断するには、システムを管理するIT部門だけでなく、実際の業務や役割を理解している業務部門の関与も欠かせません。
IDや権限をIT部門だけの管理課題として捉えるのではなく、組織全体のガバナンスの対象として管理していくことが求められています。
IGAでは、権限情報を可視化するとともに、その権限が現在も必要かどうかを定期的にレビューし、承認や変更の履歴を管理します。
代表的な機能として、次のようなものがあります。
これにより、従来の権限管理から、例えば次のような変化が期待できます。
| Before | After |
|---|---|
| Excelなどを使った手作業での権限棚卸 | 権限状況を一元的に可視化 |
| 属人的な判断やメールによる承認 | 標準化された承認プロセス |
| IT部門を中心とした権限確認 | 業務部門を含めた定期的なレビュー |
| 監査のたびに必要な情報を収集 | 証跡を継続的に管理し、監査対応を効率化 |
IGAの価値は、単に権限管理の作業を効率化・自動化することだけではありません。
「誰が権限の妥当性を判断し、誰が責任を持って管理するのか」を明確にし、組織として継続的に権限を統制できる状態をつくることにあります。
IGAというと、新たなセキュリティ製品やツールを導入することをイメージするかもしれません。
しかし、IGAはツールを導入するだけで成立するものではありません。
「どの業務・役割に、どの権限が必要なのか」
「誰がその権限を承認するのか」
「どのタイミングで権限を見直すのか」
といったルールや業務プロセスを整理したうえで、それらを継続的に運用できる仕組みを構築することが重要です。
クラウドやSaaSの利用が拡大し、企業が管理するIDやアクセス権限が増え続けるなか、重要になるのは、単にアクセスを「制御する」ことだけではありません。
IGAは、そのためのガバナンスを支える考え方・仕組みといえます。
企業におけるID・権限管理は、クラウドやSaaSの普及によって、これまで以上に複雑になっています。
そのなかで求められているのが、単にIDを発行しアクセスを制御するだけではなく、「誰が、なぜ、その権限を持っているのか」「現在もその権限は妥当なのか」を継続的に確認し、説明できる状態を維持することです。
IGAは、こうした権限管理を組織的・継続的に行うための仕組みです。
そして、その実現にはIT部門だけではなく、権限の妥当性を判断する業務部門や、ガバナンス・監査を担う部門も含めた取り組みが重要になります。